このドキュメンタリー映画は、様々な始めて見る自然や風景、珍しい記録写真、ヘル
ツォークの含蓄あるナレーションなどなどで、もちろん作品単独でも楽しめるとは思
いますが、作品に満載されたチャトウィンの「歩いて見た世界」に繋がる世界（南米
のパタゴニアとかオーストラリアの先住民の世界とか）や、ヘルツォークの映画作品
に繋がる思考やイマジネーションとともに楽しめれば、より面白い。どんな世界に繋
がるのかは、観る人それぞれでしょうね。
私自身は、映画観ながら、北半球の欧州や北米を中心に進歩してきた（とふつう考え
られている）人間社会の歴史を、もういっぺん遡って「もうひとつ別の世界」の歴史
もあり得たんだなあ、というようなことを想っていました。
「世界は、徒歩で旅する人に、その姿を見せる」とヘルツォークは言います。その通
りだと思います。
私たちが、地球を覆いつくしている様々なメディアや通信網を通じて見ている世界
は、その本当の姿なのだろうか？
実は、いま見えている世界とは全然別の世界があって、歴史を遡ってその世界に至る
道を探したいと誰もが願っているような気もします。そして、この映画にはそんな切
実な、別の世界を思い描き、希求する想像力と好奇心をかきたてる力が確実にあると
思います。
そのざき・あきお 毎日新聞大阪開発(株)Mエンターテインメント統括プロデューサー
6月17日から シネ・リーブル梅田、京都シネマ、元町映画館 にて順次公開。
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