「テレビ離れ」の若者 硬派ドキュメンタリーに意外な好反応 ~「月刊 風まかせ 学生とつくるメディア」誕生の記 その2   編集スタッフ 澤田隆三(MBSシニアスタッフ)

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創刊号で、「風まかせ」が1998年に玉造で産声をあげるまでのいきさつを、バツグンの記憶力を誇る松井寛子さんが書き、このたびの「月刊 風まかせ」創刊にあたっての意気込みを、編集スタッフの文箭祥人さんが書きました。

わたしはここで、放送局に長年勤めてきた経験と、現在いくつかの大学の教壇に立って大学生たちと交わっている立場から、オールドメディアと若い人たちをつなぎたいという「月刊 風まかせ」創刊に込めた思いを綴りたいと思います。

今年9月に発表されたNHKの放送文化研究所の調査結果が大きなニュースとなりました。テレビ視聴の全員平均時間の調査(2020年、一日当りのテレビ視聴時間)で、10代の男女とも1時間を下回ったのです(男性52分、女性53分)。2010年の調査では10代男性が1時間50分、同女性が2時間1分でしたから、この10年で半減したことになります。若者のテレビ離れが裏付けられたと報じられました。ちなみに50代では男女とも2時間超、70代では5時間を超えています。

実際、いくつかの大学でメディア論の講義をしていますが、「ほとんどテレビを見ない」という学生の割合は5割くらい、というのが実感です(厳密な調査結果ではない)。そんなテレビ離れ世代に向き合うテレビマンは何を話すべきか、悩ましくはあるのですが、実際の番組を見てもらったり、制作のプロセスの話をしているうちに、「食わず嫌い」の一面があるのではないかと思うようになりました。

ある大学で「表現の自由」について考える講義をしたとき、憲法や判例の話をかじってみても退屈だろうからと、MBSが2017年に制作した「映像‘17宮武外骨と安倍政治~権力の嗤い方」というドキュメンタリーを見て、その上で香港で起きていることなどに触れて学生たちに短いレポートを書いてもらったことがあります。

誕生の記 その2写真
月刊風まかせ誕生の記と宮武外骨

すると、意外だったのはこの番組への食いつき方です。

明治期に「滑稽新聞」という雑誌で時の権力者をこき下ろしまくり、4度も投獄されたジャーナリスト・宮武外骨の半生をたどって、安倍政治に向き合う現在のジャーナリズムと対比させた、どちらかといえば硬い番組でしたが、「宮武のおじさんが面白い」「現在のジャーナリズムも外骨のようにユーモアと風刺をきかせるべき」といった反応が多く、ドキュメンタリーというものを初めて見たが非常に興味をもった、という声も少なからずありました。

「いいものを作れば見てもらえる…」と、私などの制作者は思い込みがちです。あるいはまた、「重いテーマは見てもらえない」と、一日のプログラム編成では明るくて軽くて楽しい番組が圧倒的に多い。しかし、教室で大学生と交わっていると、若者の志向というものをテレビ業界のおとなたちが決めつけてかかってはいないか、と感じます。重いテーマを若い人たちが避けているとは限らないし、例えばドキュメンタリーの企画書を書いてもらうとマイノリティーやハラスメント、ブラック企業に関するテーマが多いのです。決してお笑いだけがテレビ、などとは思っていません。学生は時代の動きに敏感です。

そんな思いから、「月刊 風まかせ」は、オールドメディアといわれるテレビや新聞界にいた(いる)人間が、若い人たちに積極的にアプローチして、議論し、意見を交わすことで、それらを時にメディアにフィードバックできるような「場」になればと願っています。そこに、「オールド」が気づかない新しいものの見方、発見があれば最高です。

前号で文箭さんが書いた「マスコミOBが学生たちとつながって」「一緒につくっていく」このWEBマガジンには、そんな思いも込められています。よろしくお願いいたします。

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