森友公文書改ざん、税金1億円でもみ消し 財務省「認諾」で裁判終結  木村真

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佐川氏の直接関与示す「赤木ファイル」、裁判で明るみに

「認諾」という言葉を知っていた人が、どれぐらいいるのだろうか? 森友問題公文書改ざんで、改ざんを強要され自死に追い詰められた近畿財務局職員だった赤木俊夫さんの妻・雅子さんが、国(財務省)と当時の財務省理財局長・佐川宣寿氏個人を訴えていた損害賠償訴訟で、12月15日、それまで訴えを棄却するよう求めていた財務省が、突然、雅子さんの請求を全て受け入れる「認諾」を裁判長に伝え、裁判が終結した。
「夫はなぜ自ら命を絶たねばならなかったのか? ただただ真実が知りたい」という一心で、夫の自死という絶望の淵から立ち上がり、勇気を奮い起こして提訴した雅子さん裁判。審理の過程で、財務省は、赤木さんが改ざんの経緯を詳細にまとめ、一冊のファイルに綴じた書類を提出させられる羽目となった。存在について語られてはいたものの、財務省職員と大阪地検の捜査関係者以外、誰も見たことがなかったこの「赤木ファイル」。雅子さん側が提出を求めたが、当初、財務省は存否すら明らかにせず提出を拒んでいた。裁判長から促され、今年6月、ようやく提出に応じた。
雅子さんを通じて公開された「赤木ファイル」を見ると、財務省本省からの改ざんを指示するメール、それに対する近畿財務局側の応答、改ざん前と改ざん後の文書などがまとめられており、財務省自身による内部調査報告書ではぼんやりとしか分からなかった改ざんの具体的な経緯が、生々しく浮かび上がる驚くべきものだった。特に、佐川理財局長に改ざん後の文書を見せたところ「ダメ出し」が出て、再度改ざんする様子など、佐川氏が具体的・直接的に改ざんに関与していたことを物語るメールは、財務省報告書では全く分からなかった新たな事実を明らかにした。

賠償金払って真実隠蔽 「ふざけるな」と雅子さん

2021年12月23日、近畿財務局前での財務省「認諾」に抗議する緊急アクション

財務省としては、訴訟が続くことでさらに証拠書類を提出させられたり、核心を知る人物の証人尋問などにより真実が明らかとなることを避け、賠償金を払うことで、うやむやのまま、とにかく訴訟を終結させようとしたことは明らかだ。実に卑劣で卑怯なやり方だ。言うまでもないが、支払われる賠償金約1億円は、財務大臣や財務省高官のポケットマネーではなく、税金だ。
「税金1億円で疑惑もみ消し」という信じがたい、かつ許しがたい今回の財務省の「認諾」に、全国で怒りの声が噴出している。原告の雅子さんも、記者会見で「ふざけるな!って言いたいです」と、珍しく激しい言葉で財務省を強く批判した。
私たち「森友学園問題を考える会」は、12月23日、大阪市中央区の近畿財務局前で、緊急の抗議アクションを行った。東京の「森友問題幕引きを許さない実行委員会」と連携し、財務省本省前での東西同時アクションとして行い、大阪では約80人が参加。「財務省は隠蔽をやめろ!」「雅子さんの思いを踏みにじるな!」「うやむやのまま裁判終結は許さないぞ!」と抗議の声を上げた。東京では約200人が参加、作家の落合恵子さんも駆けつけてアピールしてくださった。

検察に提出した書類の公開を求める新たな裁判

財務省「認諾」により国相手の訴訟は終結してしまったが、佐川氏個人を相手とする部分は継続する。改ざんの総指揮者だった佐川氏の証人尋問は何が何でも絶対に必要だ。
そしてもう一つ、雅子さんが10月29日に提訴した新たな裁判も、要注目だ。
今年8月、雅子さんは財務省に対し、大阪地検に提出した証拠書類一式を開示請求した。
森友問題関連で、私たち「考える会」メンバーはじめ全国の市民が、最初の「アベ友学園への国有地叩き売り」での背任容疑、公文書改ざんでの「有印公文書変造」など、8つの容疑で財務省高官ら38名を刑事告発した。大阪地検特捜部が捜査したが不起訴となり、当然、検察審査会に審査を申し立て、検審の「不起訴不当」議決と再捜査を経て、2019年8月に不起訴が確定。雅子さんは、財務省が検察に提出した書類を開示請求。ところが財務省は、存否すら明らかにしないまま(またか!)非開示と決定。雅子さんはこの決定を不当だとして、決定取り消しを求める裁判を新たに起こしたのだ。

検察審査会「不起訴不当」議決により再捜査したが、「再び不起訴」との一部報道を受け、大阪地検前で起訴を求める街宣(2019年7月24日)

「不起訴」による証拠書類の破棄を防ぐ

「国有地の叩き売り」にしろ「公文書改ざん」にしろ、普通に、素直に考えれば誰が見ても犯罪で、少なくとも、いくらなんでも、起訴ぐらいは当然なのに、不起訴は全く不当だが、不起訴となると責任者が罪に問われないことももちろん悔しいが、さらに残念なのは、検察が集めた証拠類が闇に葬り去られること。
福島第一原発の事故をめぐって、東電の旧経営陣が業務上過失致死傷容疑で刑事告発を受けたが不起訴となった件でも、検察はいったん不起訴としたが、検察審査会の「起訴相当」議決を経て強制起訴され、裁判となった。一審では無罪となったものの、東京高裁で裁判が続いている。訴訟の過程で、検察官役の弁護士によって様々な証拠資料が確認され、この訴訟だけにとどまらず全国の反原発運動にとって貴重な資料となっている。
森友問題についても、不起訴そのものも不当だが、証拠が廃棄されれば、起訴されるべきでなかったのか確認不可能となり、真相究明はさらに遠のくことになる。雅子さんが証拠書類一式の開示請求→非開示決定→決定取り消しを求めて提訴したと聞き、「その手があったか」「すごいなぁ」と改めて感服した。
それにしても、財務省は「検察の捜査活動の内容を明らかにしてしまう」として存否すら明かさず非開示決定したとのこと。(不可解にも)不起訴が確定し、捜査には何の支障もあるはずもないのに、相変わらずの隠蔽体質には驚きとともに強い憤りを感じずにおれない。

安倍昭恵関与の国有地叩き売りの究明も期待

2017年大みそかのモリカケ・カウントダウンフェス」。豪華ゲストを迎えてもりそば・かけそばを食べながらのトークをインターネット中継。『新聞うずみ火』矢野宏さん(左)、木村の森友裁判代理人弁護士・大川一夫さん(右)と

この裁判は「真相究明に迫る」という意味では、雅子さんの最初の裁判(先日「認諾」により終結した国賠訴訟)よりも重要かもしれない。
なぜなら、開示されるべき証拠書類は、公文書改ざん関連だけでなく、国有地払い下げの背任容疑をめぐるものも含まれているからだ。赤木俊夫さんが直接関わったのは公文書改ざんだけだが、そもそも、公文書改ざんという国家犯罪(不起訴になろうと、公文書改ざんが犯罪であることに変わりはないし、これが犯罪でなければこの国は崩壊だ!)を犯してまで何を隠そうとしたのかと言えば、森友学園に国有地をタダ同然で差し出したにも等しい、国有地払い下げの異常さであり、そこに安倍昭恵が関与していたことだ。
公文書改ざんと改ざんを招いた国有地叩き売り、その両方についての真相が究明されてこそ、森友問題の全容が明らかとなる。雅子さんの新たな訴訟によって非開示決定が取り消され、検察に提出された証拠書類が開示されれば、いったいどんなものが出てくるのか、想像するだけでドキドキする。

問われるのは岸田首相の姿勢だ

財務省が検察に提出した証拠書類の非開示決定の取り消しを求め、雅子さんは新たな裁判を起こしたわけだが、本来であれば、わざわざ裁判で争うまでもなく、財務省が開示に応じれば済んでいたのだし、これからでも開示さえすればそれで終わりという話だ。それこそ、この裁判こそ開示の請求を「認諾」し、終結すれば良いのだ。ならば、財務省に、財務大臣に、「開示せよ」と指示できる人物がいるではないか。そう、内閣総理大臣岸田文雄、その人である。
岸田首相は常々「国民の声に丁寧に耳を傾ける」「人の話を聞けることが特技」などと話しているようだ。だったら、国民の79.7%が森友問題の再調査を求めている(12/18・19実施の共同通信世論調査)のだから、さっさと財務大臣に非開示決定の取り消しと証拠書類の開示を指示すればよいのだ。「国民が納得するまで丁寧に説明することが大切」などとタワゴトをほざいている暇があるなら、さっさと証拠書類を開示させろ!
森友問題は過去の問題などではない。「限りなく黒に近いグレー」の疑獄事件の真相究明をする気があるのか、それともうやむやのうちに幕引きを図ろうとするのか? 今の政権の、岸田首相の姿勢が問われている問題なのだ。

木村真 森友学園問題を考える会、豊中市議
【お知らせ】
1.緊急オンラインイベント(Zoomにて)
 12/29(水)、16:30~18:00(多少前後する可能性あり)
 相澤冬樹さん(ジャーナリスト)、生越照幸弁護士(赤木雅子さん代理人)
 *正確な開始・終了時刻や視聴申込方法等は一両日中に発表予定
2.岸田首相・鈴木財務相あて署名「検察に提出した書類を開示してください」
 これも一両日中にまずはネット上で署名フォームを公開します
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